アメリカ合衆国の州を愛称から巡る その52 『Beehive State』とユタ州

ソルトレイク(Salt Lake)国際空港に近づきますと、地表は真っ白の塩で覆われています。19世紀初頭から、スペイン人探検家、ニュー・メキシコの罠猟師や交易業者が西海岸への近道を探す過程でこの地を踏査します、その結果有名な貿易街道である「オールド・スパニッシュ・トレイル」(Old Spanish Trail)が生れます。この街道は、後の開拓者がカリフォルニアやオレゴンに向かう際に通ったところです。州名は、先住インディアン部族、ユテ族(Ute)の「山の民」に因んでいます。

1847年に中西部における宗教上の対立から逃れ、ブリガム・ヤング(Brigham Young)に率いられ安住の地を求めるモルモン教徒(Mormons)達がこの地に辿り着きます。現在も州人口の64%がモルモン教徒といわれ、その総本山は州都であるソルトレイクシティ市にあります。1880年代に一夫多妻制を違法とする法律が成立し、モルモン教会は1890年の綱領で一夫多妻を禁止します。

Salt Lake

モルモン教会、別名末日聖徒イエス・キリスト教会の教徒が多数を占めることから、同州に根づいている踊りや演劇は元来、モルモン青年の教会活動の一環として生まれたものといわれます。音楽では特にタバナクル聖歌隊(Mormon Tabernacle Choir)は世界で最古, 最大の聖歌隊の一つです。大聖堂のオルガンのパイプは11,623本もあります。私は、ユタ州立大学(Utah State University)を訪ねたついでに木曜日夜の聖歌隊リハーサルを楽しみました。練習後、見学者のQ&Aも良かったです。Tabernacleとは、日本では「幕屋-テント」と訳されています。

Mormon Tabernacle Choir

ユタ州の主な鉱物資源は、銅、金、モリブデン及びマグネシウムです。ユタ州は豊富な鉱物資源に恵まれており、ソルトレイクシティ市周辺には、金・銀・銅・鉛などの鉱床があり、ゴールドラッシュ以降、ユタ州は鉱山開発に伴って発展します。特に銅鉱石はユタ州の鉱物生産の中でも最も多い生産高を有しています。

ユタ州の名産に蜂蜜があります。養蜂が盛んなのです。蜂は州の昆虫となっているので『Beehive State』(蜂の巣州)と呼ばれています。また、アメリカにおける航空宇宙産業の中心地としても知られており、近年ではIT産業も大きく発展しています。ユタは、2002年に冬季オリンピックがソルトレイクシティで開催されたことで日本でも広く知られるようになりました。5つの国立公園にはさまざまな自然の不思議があり、「レッドロックのワンダーランド」(Red Rock Wonderland)と呼ばれるアーチーズ国立公園(Arches National Park)には、その名が示すように2,000以上の自然のアーチ状の造形物があるといわれます。