アメリカ合衆国の州を愛称から巡る その49 『Mount Rushmore State』とサウスダコタ州 

サウスダコタ州(South Dakota) はアメリカ中西部のグレートプレーンズ(Great Plains)と呼ばれる大平原にあり、州の面積の約90%が草原という緑豊かな土地です。南西部はハイプレーンズ(High Plains)という標高の高い平原地帯でもあります。ロッキー山脈(Rocky Mountains)から流れ出る河川によって形成された多くの堆積平野の総称といわれます。州の名前である「ダコタ」はアメリカ先住民族のスー族(Sioux)の言葉、ダコタ(仲間)に由来します。

州都は州のほぼ中央に位置するピエル(Pierre)ですが、最大都市は州の東側に位置するスーフォールズ(Sioux Falls)です。スーフォールズ一帯には州民の大半が住んでいます。他方、州の西側は牧畜業が盛んな地域で、特にブラックヒルズ(Blackhills)と呼ばれる低木の松におおわれた山地は、スー族が聖地としてあがめた場所でもあります。1870年代後半に聖地を守ろうとするスー族と白人との間で激しい戦いが繰り広げられたブラックヒルズは、「壮烈第7騎兵隊」(They Died with their Boots on)や「ダンス・ウイズ・ウルブス」(Dances with Wolves)など多くの映画の舞台にもなっています。そのブラックヒルズ一帯で最も有名な観光スポットが、4人の大統領の顔が彫られたマウント・ラッシュモア国立メモリアル(Mount Rushmore National Memorial Park)です。

Dances with Wolves

ブラックヒルズのマウント・ラッシュモア山(Mount Rushmor)には、刻まれた有名な18 メートルの石の顔を見ることができます。4 人のアメリカ大統領はジョージ・ワシントン(George Washington)、トマス・ジェファーソン(Thomas Jefferson)、セオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt)、エイブラハム・リンカン(Abraham Lincoln) です。この巨大な彫刻は14年の歳月をかけ1941年に完成します。州の愛称は、「ラシュモア山の州」(Mount Rushmore State)とか「コヨーテの州」(Coyote State) となっています。

Crazy Horse

マウント・ラッシュモアが民主主義の象徴とされるのに対し、アメリカ先住民族のシンボルがクレイジー・ホース(Crazy Horse)です。侵入者に対して勇敢に立ち向かったスー族の戦士、クレージーホースを讃えた記念碑(Crazy Horse Memorial)です。マウント・ラッシュモアの彫刻に携わった一人の彫刻家、コーチャック・ジオルコウスキー(Korczak Ziolkowski)が彫り始めました。1982年に彼が亡くなった後は、彼の家族がその意志を引き継いでクレージーホースを彫り続けています。完成すると高さ169メートル、幅192メートル、顔の大きさだけでも27メートルとなります。マウント・ラッシュモアの数十倍の世界最大の彫刻になります。民間からの寄付のみで支えられている現在進行中のプロジェクトです。1959年のアルフレッド・ヒッチコック(Alfred J. Hitchcock)監督映画作品『北北西に進路を取れ』(North by Northwest)のクライマックスシーンでは同記念公園の彫刻が舞台となりました。

マウント・ラッシュモアのあたりはゴールドラッシュ期に白人とアメリカ・インディアンとの激しい抗争が繰り返された地で、ラシュモア山を含むブラックヒルズは、古くよりアメリカ・インディアンの聖地とされていました。「グレート・スー・ネイション(偉大なスーの国)(Great Sioux Nation)」として、西部で最大最強の狩猟民族、スー族が領土としていた所です。現在も、同地で保留地(Reservation)を領有するインディアン部族はスー族のみです。クレイジー・ホース(Crazy Horse)はスー族の勇猛果敢な戦士で、しばしば白人と戦い、1876年にはカスター将軍(General Custer)の騎兵隊を全滅させたことは良く知られています。

Powwow

アメリカ先住民が住むサウスダコタ州では、さまざまな先住民族の文化に親しむことができます。実際の文化を見るには、パウワウ(Powwow)に参加することです。パウワウは「ワチピ」(Wachipi)とも呼ばれるアメリカ先住民の伝統的な祭典で、毎年サウスダコタ州の各地で開催されています。活気あるドラム演奏や歌、手の込んだ伝統衣装の踊り手が呼びものとなっています。とりわけ、最も歴史あるパウワウは、シセトン・ウォーペトン・オヤテ・ワチピ(Sisseton Wahpeton Oyate Wacipi)で、通常 7 月に開催され、アメリカ国内でも屈指の歴史を誇るパウワウといわれます。