これまでアメリカ合衆国の歴史を調べてきました。これから数回にわたりアメリカ現代史で、特に政治にかかわる話題を取り上げることとします。著述家でジャーナリストのコリン・ウッダード(Colin Woodard)は、アメリカは歴史的・文化的な成り立ちが異なる11種類の「国」(ネーション: nation)で構成されていると主張しています。この論点は、「American Nations: A History of the Eleven Rival Regional Cultures in North America」という著作に表れています。
合衆国は、確かに50の州からなる国です。しかし、実は共通の文化、民族的起源、言語、歴史的経験を持つ「ネーション」で構成されているというのです。ネーションとは、共通の文化、民族的起源、言語、歴史的経験、工芸品、シンボルを共有しているか、あるいは共有すると信じている人々の集団のことです。決して一つのアメリカがあるのではなく、いくつかのアメリカがあり、そのそれぞれのネーションが何世紀も前から独自の価値感を持ってきたという分析です。
アメリカの歴史では、同じようなパタンでネーションが互いに反目し合っているのを確認できるといわれます。大統領選挙の際の政党や候補者の主張がそれに表れます。そこでは、アメリカ市民の政治的な選好は煎じ詰めれば、アメリカの市民生活の鍵概念である「自由」をいかに推進するかをめぐる二つの考えに必ず帰着してきたといわれます。