懐かしのキネマ その117 【太陽がいっぱい】

【レミセラブル】【地下室のメロディ】につぐサスペンス犯罪ものです。原題は英語で【Purple Noon】。1960年にフランスで製作され、サウンドトラックも大変有名になった作品です。

アメリカ人のトム・リプリー(Tom Ripley) はイタリアに赴き、5,000ドルもらえる約束で大金持ちのフィリップ(Philippe Greenleaf)が父親のビジネスを継ぐためにサンフランシスコ(San Francisco)へ戻るように依頼されます。フィリップは戻ることに同意はするのですが、自身の銀行口座にたんまりある金を定期的に引き出してはイタリアで自由奔放な暮らしを続けようとするばかりで、全然帰国する気はありません。フィリップの父親から謝礼金を受けることが出来ないままのトムは、やがて手持ちの金がなくなってしまい、その結果フィリップが日々湯水のように使う金のおこぼれをあてにして、彼と行動を共にせざるを得なくなります。

Philippe, Marge & Tom

フィリップに言われれば買い物や調理やハガキの代筆をするなど、トムはまるで都合の良い「使い走り」のように扱われる有様です。内心嫉妬心や怒りにさいなまれていきます。トムはフィリップと彼のガールフレンドであるマージ(Marge)に惹かれていきます。フィリップは次第にトムのへつらいに辟易し始め、ヨットで出掛けたとき、トムをボートに置き去りにして何時間も太陽にさらすのです。

トムはあらかじめ練ってあった計画どおり、フィリップになりすまして彼の財産を手に入れるための手を着々と打ち始めます。トムはフィリップを殺害し、自分が彼になりすまそうとするのです。フィリップが他の女性と関係している証拠をマージに見せ、彼女を怒らせるのです。マージが海辺にいくと、フィリップはトムに関係は一時的なものだと認めます。ヨットの上で、フィリップは冗談だろうといいながら、トムに金銭を渡すから自分とマージから離れるように伝えます。それを了承すると見せかけてトムはフィリップを刺して海へ捨て、港に戻ってきます。波止場に戻ると、トムはフィリップが姿を消したとマージに伝えます。

フィリップのパスポートの偽造には、公印を粘土で型どりにしてニセの公印を作り、それを自らの写真に押すことで、見事に差し替えます。フィリップのサインをそっくり真似るため、スライド映写機を使い彼のパスポートの筆跡を拡大して壁に貼った紙に映写し、筆跡の映像を何度もなぞって練習し、見事にフィリップと完全に同一の署名ができるようになります。トムは、さらに彼の声色も完璧に真似してフィリップになりすまし、電話越しで婚約者のマージすら騙すことに成功するのです。マージがフィリップに会いたがれば、フィリップのタイプライターでつれない文面の手紙を作成しマージに手渡し、フィリップに女ができたから会いたがらなくなったのだ、と思わせることにも成功します。才気と才能に溢れた男の面目が躍如とします。

フィリップの友達、フレディ( Freddie Miles)がホテルに会いにきますが、フィリップでないと疑います。トムはフレディを殺害します。警察がフレディの死体を見つけますが、トムは自分とフリップを使い分けてなりすまします。トムはフィリップがフレディを殺したとして、自殺し財産はマージに譲るという書き置きを残します。トムは機知を働かせて何とかイタリア警察の追跡を逃れます。そしてマージに言い寄っていきます。そして彼女と同棲を始めるのです。

フィリップのヨットを買い手の業者が点検しようと波止場に引き寄せます。アンカーに引っかかったカンバスに包まれた死体が発見されます。スクリューに巻き付けられていたのです。トムは露知らず、ビーチでワインに酔いしれています。犯人がトムであることを確信した刑事がウェイトレスにトムを呼ぶように依頼するのです。