「アラビアのロレンス」(Lawrence of Arabia)は、1962年に公開された上映時間3時間36分のイギリス・アメリカ合作映画です。アラブ独立闘争を描いた歴史、戦争映画で、民族独立に尽力した実在のイギリス陸軍少尉ロレンス (Lieutenant Thomas.E. Lawrence)の波乱に満ちた半生を描いています。監督はデヴィッド・リーン(David Lean)。主演はピーター・オトゥール(Peter O’Toole)、オマル・シャリーフ(Omar Sharif)、アンソニー・クイン(Anthony Quinn)、アレック・ギネス(Alec Guinness)らの名優です。
この映画の舞台は1914年前後のエジプト(Egypt)やアラビア半島(Arabia) です。第一次世界大戦が勃発し、アラビアはドイツと結んだオスマン帝国 (Ottoman Empire) の圧政下にありました。イギリスは、ドイツ連合軍の勢力を分散させるため、戦略家ロレンス少尉をアラビアに派遣します。イギリス陸軍カイロ司令部に勤務するロレンスは、トルコからの独立を目指す反乱軍の指導者ファイサル王子 (Prince Faisal )に会うため旅に出るのです。やがてファイサル王子の軍事顧問となったロレンスは、反乱軍の無力さを目の当たりにします。そこでロレンスは、ベドウィン(Badawin)のハリス族 (Harith) のリーダー、アリ(Sherif Ali)や黄金を探し求めるアウダ(Auda) らとともに、独自のゲリラ戦法を駆使して反乱軍を指揮し、アラビア民族をまとめあげて、見事トルコ軍を打ち破ることに成功します。トルコ軍が防衛していた戦略上の重要港湾都市アカバ(Aqaba)を攻め落とすのです。
ロレンスは反乱軍のリーダー、アリなどから人々の上に立つような優れた者と崇められ「エル・オレンス」(El Aurens) と呼ばれるようになります。その後も次々と勝利を収めていくのです。そして、アラブ国民から「砂漠の英雄」とうたわれるようになるのです。しかし、アラブをフランスとともに分割する方針を決めていたイギリス陸軍は、大アラブ王国を支持しその独立に奔走するロレンスは政治的に邪魔な存在となっていきます。こうして、ロレンスはアラブ人同士の争いや国同士の政治的駆け引きに翻弄されるようになっていきます。自分が軍上層部に利用されていることを知るのです。ファイサル王も「もうここには勇士は必要でなくなりました。ただ、あなたに対する私の感謝の気持ちは計り知れない」といってアラブの分割を承認するのです。こうしてアラブ民族も部族間の対立から大アラブ王国を樹立することに失敗します。
ロレンスはイギリス陸軍の英雄として大佐に昇進させられながらも、アラブに共感する者として大きな失意を胸に抱きながらアラビアから追放されるのです。列強の植民地支配によって、今も中東情勢は不安のままです。ロレンスの理想主義をこの映画から教えられます。