1941年、親ドイツのヴィシー政権(Régime de Vichy)の管理下に置かれたフランス領モロッコ(Morocco) の都市カサブランカ(Casablanca)を舞台とした戦争とロマンスの映画です。ドイツの侵略によるヨーロッパの戦災を逃れた人の多くは、中立国のポルトガル(Portuguese)経由でアメリカへの亡命を図ろうとしていました。
主人公であるアメリカ人のリック(Rick Blaine) は、カサブランカで酒場「カフェ・アメリカン」(Rick’s Cafe American)を経営しています。彼には、パリが陥落する前に理由を告げずに去った恋人イルザ・ラント(Ilsa Lund)がいます。イルザはその酒場にやってきます。イルザはリックとのパリの思い出の曲『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』(As Time Goes By)を弾くようにピアニストに頼みます。そこにリックが現れます。
イルザの夫は、ドイツに併合されたチェコスロバキア人(Czechoslovakia) のドイツ抵抗運動の指導者ヴィクター・ラズロ(Victor Laszlo)です。ラズロは現地のオルグと接触、カサブランカからの脱出のチャンスをうかがっていました。サブランカ警察署長のルノー(Captain Louis Renault)は計算高い男で、流れに逆らうように異郷のカサブランカで生きるリックに共感していました。リックは、かつてスペインのレジスタンスに協力していました。ルノーはリックに対して、ラズロには関わるなと釘を指します。現地司令官であるドイツ空軍のシュトラッサー少佐(Major Strasser)は、ラズロをカサブランカ市内に閉じ込めます。
イルザはリックに会い、夫を助けられるのはリックしかいないと、必死に協力を懇願します。というのは、リックは闇屋からヴィシー政権の発行した通行証を譲り受けていたからです。そしてイルザは通行証を渡そうとしないリックに銃口さえ向けるのです。しかしイルザは引き金を引くことが出来ず、2人はお互いの愛情を確かめ合うのです。
リックは、ラズロとイルザが通行証を欲しがっている事実をルノー署長に打ち明け、現場でラズロを逮捕するようにと耳打ちします。手柄を立てるために、約束の閉店後の店にやってきたルノーです。しかしリックの本心は、2人を亡命させるためにルノーを空港まで車に同乗させて監視の目を欺くことにありました。シュトラッサーを射ち殺してでも彼女を守ろうとするリックです。
愛を失っても道義を貫こうとしたリックを前にして、実はレジスタンスの支援者であったルノーは、自由フランスの支配地域であるフランス領赤道アフリカのブラザヴィル(Free French in Brazzaville)へ逃げるように勧めて見逃すことにするのです。リックとルノーの二人は戦時下にあって「この狂った世界を終わらせなければならない」と意気投合します。イルザとラズロを載せた飛行機は宵闇の中へ消えていきます。