懐かしのキネマ その42 【卒業】

『卒業』(The Graduate)もニューシネマ(New Cinema) の代表といえるほど、映画フアンにはたいそう受けた作品です。アメリカ東海岸の有名大学陸上部のスターで新聞部長でもあったベン・ブラドック(Ben Braddock)は、卒業を機に西海岸のカリフォルニア州のパサデナ(Pasadena)へ帰郷します。ベンは、将来を嘱望されながらも浮かない虚無的な毎日を送っています。友人親戚一同が集った卒業記念パーティーで、将来を約束されたベンに人々は陽気に話しかけます。そのパーティーで、父親の職業上のパートナーであるミスター・ロビンソン(Mr. Robinson)の妻のミセス・ロビンソン(Mrs. Robinson)と再会します。卒業記念のプレゼント、赤いアルファロメオ(Alfa Romeo)でミセス・ロビンソンを送ったベンは、彼女から思わぬ誘惑を受けるのです。

二度目のデートの当日、約束の場所に来たのはミセス・ロビンソンです。彼女は自分の娘でベンのガールフレンドのエレン(Ellen)と別れるように迫り、別れないならベンと交わした情事を娘に暴露すると脅すのです。焦燥したベンはエレーンに「以前話した不倫の相手は、他ならぬあなたの母親だ」と告白します。ショックを受けたエレンは、ベンを追い出すのです。エレンを忘れられないベンは、彼女の大学に押しかけ、大学近くにアパートを借りてエレンを追いかけるようになります。結婚しようという彼の言葉を受け入れかけたある日、ベンは彼女が退学したことを知ります。そしてベンはエレンが医学部卒業の男と結婚することを知ります。

ようやく、彼女の結婚式が執り行われているサンタバーバラ(Santa Barbara)にある教会を聞きだし、そこまで駆けつけたベンは、エレンと新郎がまさに誓いの口づけをした場面で叫ぶ。「エレン、エレーン!!」。ベンへの愛に気づくエレンはそれに答える。「ベーンッ!」。ベンを阻止しようとするミスター・ロビンソン。悪態をつくミセス・ロビンソン。二人は手に手を取って教会を飛び出し、バスに飛び乗ります。バスの席に座ると、二人の喜びは未来への不安を予感するように「サウンド・オブ・サイレンス」(The Sound of Silence)が流れるのです。