アメリカの文化 その14 フードスタンプ

私の3人の子どもはマディソン市(Madison) の小学校にいるとき、「フードスタンプ」(food stamp)という食料交換クーポン券を貰いました。私には収入が全くなかったので、学校に申請するとフードスタンプがすぐ認められました。アメリカには1960年代から貧困層にクーポン券を配布する食料費補助政策が実施されます。学校給食にも「無料―割引給食プログラム」ができました。

フードスタンプは「食べ物は心と体をつくる大事なもの、人間の基礎であり国にとっては財産である」という考え方が前提にありました。当たり前のことです。しかし、今も大勢の貧困家庭で育つ子どもがいます。無料の給食が必要なのです。一度ミネアポリス(Minneapolis)の小学校を院生3人とで訪ねたとき、朝食を食べてこない子どもに給食が振る舞われていました。ハンバーガーとミルク、そして山積みになったケチャップがありました。私たちも無料の朝食に預かりました。ハンバーガーは通称ジャンクフード(junk food)と呼ばれます。「Junk」とは屑とかがらくたという意味です。高カロリーですが、栄養価のバランスを著しく欠いた調理済み食品を指します。他の栄養素であるビタミンやミネラルや食物繊維があまり含まれない食べ物ともいわれます。

かつては学校は自前で給食を作っていました。ところが教育予算が削減されるにつれ、給食を作れなくなり、経営が苦しい学校にファーストフード企業(catering)が入ってきます。大量に安く給食を提供できるという宣伝が効いたのです。給食のコスト減とともに給食の質が下がっていきます。ファーストフードの提供するメニューによって、栄養の偏った肥満児童が増えていきます。大人の肥満も目立ちます。いまアメリカ人の死因の多くは肥満による心疾患や脳卒中、そしてガンです。人口10万人当たりの死亡数は日本の2倍という数字です。特に心臓病や高血圧は4倍から6倍も多いのです。