アメリカの文化 その9 スパムとポーク・ランチョンミート

スパム (spam)とは、インターネット上で「無差別かつ大量に一括してばらまかれる」メッセージとかメールのことです。通常「迷惑メール」といわれます。「受信者や媒体の意向を無視して流す」のはスパム行為ともいわれます。八王子囲碁連盟のWebサイトにもスパムがやってきます。「お問い合わせ」というページを作っていますが、そこからスパムがやって来ます。その対策は講じているのですが、時々その対策をかいくぐってスパムが届きます。

本稿は迷惑メールの類のスパムではなく、缶詰のことです。1970年に沖縄に赴いたとき、この缶詰が山のように売られていました。しかも沢山の種類があるのです。沖縄ではこの缶詰を「ランチョンミート」(luncheon meat)とか「ポーク・ランチョンミート」(pork luncheon meat)と呼ばれていました。ランチョンミートが最初に作られたのは1937年頃です。ホーメル・コーポレーション(Hormel Cooperation) が製造し始めます。優れた保存性から米軍のレーション(ration) に採用され、やがてヨーロッパやアジアで世界的に広まります。このもともとの商品名はHormel Spiced Ham(スパイスド・ハム)といわれました。それが「SPAM」(スパム)に改名されます。

沖縄県とスパムの関係です。元々沖縄には、豚肉を好んで利用する食文化があります。お祝い事には豚の丸焼きがテーブルに並べられます。1945年3月に始まった沖縄戦は6月23日に終結します。それ以来豚肉が全く手に入らなくなります。そして終戦直後には米軍から沖縄県民に配給物資としてスパムが提供されます。米軍の内部で消費していたスパムの一部が、保管期限切れの払い下げや物資横流し等で市場に出回ったのです。

手軽で保存性の高い缶詰の豚肉は県民に広く受け入れられます。スパムを含む缶詰のランチョンミートはやがて大量に輸入されるようになり、沖縄の家庭料理に欠かせない食品となっています。沖縄では、スパムを使ったゴーヤチャンプルーが最も親しまれている料理です。ニガウリと豚肉のハムが絶妙に合います。