旅のエピソード その25 「日系アメリカ人の博物館」

1885年1月、最初の日本人移民944人が農業労働者としてハワイに到着します。その後沖縄も含めて各県から多くの日本人がハワイにやってきます。ハワイ島は別名Big Island。ホノルルから飛行機で1時間のところにあるハワイで最大の島です。この島で一番大きな街がヒロ(Hilo)です。ハワイ島もまた日系人が開拓したところといわれています。

ヒロの街の中に日系アメリカ人が建てた小さな日本人センター(Hawaii Japanese Center)があります。人々が持ち寄った貴重な品々、写真などが展示されていて、小さな歴史博物館ともなっています。山本五十六連合艦隊司令官が率いる艦船が寄港したときの写真、第二次世界大戦中、合衆国陸軍に志願し、ヨーロッパ戦線で勲功をあげた日系アメリカ人のみで編成された442連隊のメンバーの写真などが飾られています。

太平洋戦争によって大多数の日系アメリカ人は、アリゾナ州(Arizona)やワシントン州の僻地に建てられた収容所に移されます。442連隊のメンバーもこうした収容所から志願してヨーロッパ戦線に向かいます。戦後、日系アメリカ人はアメリカ社会の中に日本に対する信頼を築く役割を果たします。日系アメリカ人の政治家、実業家などが輩出していきます。その一人が、ハワイ選出の上院議員、ダニエル・イノウエ(Daniel Inoue)です。戦場で負傷して片手を失う経験もします。こうした人々の働きが、高度経済成長期期における日本企業のアメリカ市場への進出に大きく貢献することになります。アメリカの国勢調査によると、日系人の特徴として「高所得」、「高学歴」、「低失業率」、「低貧困率」が挙げられています。このうち所得と学歴については、白人の平均や全米平均よりは明らかに高く、貧困率については全人種の中でも低いといわれています。

博物館の話題に戻ります。ここには歴史のある貴重な本や昔の新聞、写真などがたくさんあります。展示物の中に歴代天皇の写真があります。明治天皇や昭和天皇の写真に混じって、神武天皇の写真もあるのです。日系アメリカ人の日本に対する想いと天皇に対する深い畏敬の念をこの写真から感じたものです。