世界を旅する その二十一 アイルランド その9 ガリヴァー旅行記 その3 ”この国には乞食はいない”

第三の冒険をする場所は、ラピュータ(Laputa)という空中を浮遊する国です。ガリヴァーは、ラピュータの学問は途方もなく壮大で大仰なもので、それも実用的ではないことを知ります。例えば収穫高が100倍になるという触れ込みのラピュータ式農法は全く失敗に終わり、土地が荒廃する結果となったということを知るのです。

ガリヴァーは、ラピュータ国の陛下にイギリスの歴史を語って聴かせます。陛下は驚かれ、イギリスとは陰謀と反逆、殺人と虐殺、革命と排斥ばかりの国であると思ってしまうのです。陛下は、その理由として人間の欲望と憎しみ、不実、暗黒、狂気、嫉妬、野望といった最悪の罪によって生み出されものではないかと考えていきます。ガリヴァーの話を聴いていた陛下は、「お前はかなり腐りきった国からやって来たようだ!!」と叫ぶのです。

最後の冒険は、フウイヌム国(Houyhnhnm)です。この国は、理性のある馬が支配する国です。馬は悪徳、支配欲や物欲、憎悪や嫉妬などの非道徳的な感情も持ちません。フウイヌムには、人間によく似た卑しく忌み嫌われる動物がいます。それはヤフー(Yahoo)と呼ばれていました。それでも陛下は、フウイヌムには権力や政治、戦争というものはないこと、「うそ」という概念が理解できない国であるとガリヴァーにいいます。年をとったり病気になった場合、施設で面倒をみてもらえる、そういうわけで、この国には乞食はいないとも説明するのです。