キリスト教音楽の旅 その25 日本のキリスト教と音楽 讃美歌

教会の会衆によって神への感謝や祈り、癒し、励ましなどの意味がこめられた歌の総称です。自分の信仰を告白し、民衆への証し的な性格が歌詞に埋め込まれています。特にプロテスタントを中心として、西ヨーロッパに広がり成長したキリスト教諸教派で用いられる宗教歌が讃美歌(hymn, anthem)です。

新約聖書のマタイによる福音書26章30節では、最後の晩餐の光景が記されています。晩餐の後「一同は賛美歌を歌うとそこを出て、オリーブ山に向かいました」とあります。この時の讃美歌は日々の糧への感謝です。使徒パウロは、新約聖書エペソ人への手紙5章15-21節で「霊に満たされ、詩編と賛歌と霊的な歌によって語り合い、主に向かって心からほめ歌いなさい」と説いています。ここでの「詩」とは詩篇(Psalm)、「賛美」は詩篇以外の旧約の歌、そして「霊の歌」は初代教会の信徒よって作られた讃美歌というように分類されるのが定説のようです。初代教会では、自分たちの信仰体験を表明するために讃美歌を創作していたといわれます。

讃美歌の分類には、霊歌とかスピリチュアル(spiritual)もあります。黒人奴隷の中に広がったキリスト教から、アフリカ独特の音楽的な感性が融合して生まれた歌、黒人霊歌を指すこともあります。教会讃美歌にくらべて、より生活に根ざした歌詞が歌われます。スピリチュアルに似たのが「ゴスペル」(Gospel)です。ゴスペルとは福音とか良き知らせという意味です。これも黒人教会文化が生んだ魂の歌ともいわれ、教会で会衆が総立ちになり、手を叩いたりステップを踏み体を揺らして歌うのです。

「ゴスペル」にはハーモニーやリズム、インプロといった特徴があります。もとの故郷アフリカの文化が色濃く反映されているようです。聖書の言葉に自分たちなりの意味を持たせて歌ったのでしょう。聖書には「自由」「解放」という言葉が多く出てきますが、これは彼らにとって「奴隷制からの解放」を意味し、自由をもとめて仲間と共に歌うことで悲惨な境遇を耐え忍んだのでしょうか。
“Let Us Break Bread Together”