キリスト教音楽の旅 その15 グレゴリオ聖歌とビザンツ聖歌

キリスト教伝統の聖歌の2回目です。東方の雄をビザンティン聖歌(Byzantine Chant)とすれば,西方教会を代表するものがグレゴリオ聖歌(Gregorian Chant)です。グレゴリオ聖歌は正式にはローマ典礼聖歌と称されます。第64代ローマ教皇グレゴリウス1世 (Gregorius I)が集大成したといわれます。これには異論があるようですが,770年ごろからグレゴリオ聖歌とよぶ習慣となります。古代ユダヤの詩篇唱や賛歌が母体になり、大部分はラテン語聖書からなる典礼文を歌詞とします。全音階的な教会旋法にもとづいて歌われる単旋律の聖歌です。リズムや拍子を有する西洋音楽の源泉となった音楽といわれます。

Portrait of Pope Gregory I — Image by © Bettmann/CORBIS

他方、ビザンチン帝国における音楽はビザンツ聖歌を指します。単旋律で主に全音階で自由なリズムである点などはグレゴリオ聖歌と多くの共通点を有しています。違いといえば、直接聖書からとった歌詞でないことや、ミサに比べて聖務日課のほうが入念につくられていることが特徴とされます。最も初期の聖歌は4~5世紀頃に起こったトロパリオン(troparion)というもので,「詩篇」(Psalm)の各節の朗読の間に歌われます。6世紀頃から,短い導入部と繰返しを持つ同じ構造の節で成り立つコンタキオン(kontakion)が盛んになります。さらに7世紀頃からはカノン(canon)という楽曲が生まれます。カノンは9部分から成る非常に長い詩で、それぞれ数行から成るトロパリオンから成り立ちます。ビザンチン教会ではギリシア語が用いられたといわれます。ユダヤ(Judea)やシリア(Syria)の東方典礼の中の聖歌に基づいて生まれた音楽です。

誠実な十字架 グレゴリオ聖歌

キリエ エレイソン ビザンツ聖歌