ハングルと私 その10 キム医師

「金」という苗字は韓国ではダントツに多いですね。キム(김)と発音します。続いて李(イ) (이)、そして朴(パク)(박)という名前が御三家のようです。同姓不婚のしきたりが韓国にあります。それでもこのような苗字が多いのは不思議な感じがします。いとこや親戚はもちろん、全く知らない人でも事情によっては結婚できない場合があります。そのせいかも知れませんが、夫婦は別姓となっています。

旧京城帝国大学医学部

金先生のことです。先生は旧京城帝国大学医学部を卒業し小児科の医師として活躍されます。京城帝国大学は、朝鮮総督府の管理下で1924年に6番目の帝国大学として、現在のソウル(서울)市につくられます。朝鮮総督府は、武断政治という武力を中心として朝鮮を治めていましたが、それがうまくいかなくなり、やがて文化政治への政策へと転換します。この文化政治は「内地延長主義」と呼ばれます。それによって「内鮮共学」となり朝鮮の人々も大学に入れるようになります。金先生はたいそう優秀だったそうです。医学部に朝鮮人として入学するために大変な努力をされたはずです。

朝鮮総督府

実は、私は金先生の息子さんとアメリカで知り合います。そのきっかけはある教育とテクノロジーの活用に関する学会で彼と会ったことです。学会会場で名刺を交換しながらわかったことは、ソウルからやってきてノックスビル(Knoxville)にあるテネシー大学(University of Tennessee) の博士課程にいるということでした。彼の専門と私の専門が近かったので、アメリカの著名な研究者のことをお互いに知っていて、話しがはずんだものです。その後、何度か別な学会で会いました。彼はやがて、ソウルに戻り研究者として活躍します。彼が東京にきたとき、私のアパートに泊まったりしました。そのとき金先生からの土産も頂戴したりしました。