Last Updated on 2025年3月8日 by 成田滋
今私は第三小、第十小で囲碁教室を担当しています。それ以前に第四小でも月曜日に囲碁の手解きをしていました。ですが月曜日は振り替え休日になったり雨の日は教室はお休みという学校からの連絡で教室が休みになることが度々ありました。それでも思い出のあるところが、次の話題とする第四小での子どもとの会話です。
数少ない第四小での教室での話題です。常連の子どもがやってくると、「“かあちゃん取扱説明書“に投票した?」という会話が飛び交いました。「それっていったいなに?」ときくと、今みんなの中で読みたい本を投票している、というのです。学校の図書室にこの本は一冊しかないので、借り出すのに順番待ちらしいのです。私、早速生涯学習センターの図書館へ行き借りてきました。
主人公は、哲哉という4 年生。「今朝も朝からガミガミうるさくって、ぼくはハラがたちました。やれ早く食べなさい、宿題よ、水泳教室忘れないで、といって、ぼくんちで、一番いばっているのはかあちゃんです」といった按配です。かあちゃんの常套句は「早く!」らしいのです。「早くっていうけど、でかけるとき一番おそいのがかあちゃん。ぼくが早くって!いうとおこるので、やめてほしいです。」
哲哉は父親にそのことを話すと知恵をさずけられます。「かあちゃんはほめると、きげんがよくなるんだ。とにかくほめること」と言います。「パソコンもビデオも取扱い方をまちがえると動かないだろ、ヘタすりや故障だ、それと同じさ、扱い方! 扱い方さえまちがえなければ、かあちゃんなんてチョチョイのチョイだ!」哲哉は「かあちゃんとパソコンをおなじっていうのはどうかと思うけど、、あつかい方かあ、」と考え込むのです。
哲哉には、マザコンのカズという友がいます。カズは母親からいつも子ども扱いされ、小さいときと同じように世話をやきたがる母親がいやになっているのを知ります。哲哉にはカズの母親は優しく見えるようなのですが、カズの苦しみがわかるような気もするのです。そして自分のかあちゃんという大きな存在を思うのです。
教室でこの本を読んだ子どもは、そろそろ「ママってなにか」、「ママのあつかい方をわかったら、ゲームだって思い通りになるかもしれない」と考えられるようになるかもしれません。教室の帰り際に「自分でお母さんの取扱説明書を作ったらどう、、」とけしかけました。でも、母親は一枚も二枚も上。生まれたときから「わが子の取扱説明書」を作るのが母性本能です。
どこの教室でも子ども達は、塾、習字、英会話、算盤、空手、バレイ、バトン、チアー、スイミングなどに通っています。すべての母親は子どもの成長を見守っています。過保護でも自由放任でも子どもにとってはかけがえのない存在です。そんななかで、「先生、今日は塾があるので3時までしか碁をやれない」といってきます。「しっかり塾でやりなさい」と激励するほかありません。そんな中で「かあちゃん取扱説明書」を読んだ子どもとの会話は、碁の指導を忘れるほど愉快なものでした。
(2022 年11 月7 日)