「思う」「思う」の連発 

Last Updated on 2025年2月11日 by 成田滋

気になる言い回しとか構文のことです。それは「思います」というフレーズです。菅首相の年頭記者会見のときです。最初はテレビでしばらく聴いていたのですが、なんとも訴えるものが感じられません。首相の決意が伝わらないのです。「思います」という表現が多いからです。そこで再度ビデオを見ながら「思います」を使う回数を数えました。32回も連発するのです。それと視線が原稿に落ちているのも気になりました。予め質問に対する回答を用意していたようです。これでは説得力はありません。

人にはいろいろな癖があります。一国の総理とはいえ、地となっている癖を修正するのは難しいようです。
・「拉致問題を解決していきたいと思います」
・「リーダーシップを発揮したいと思います」
・「オリンピックの開催で希望をお届けしたいと思います」

このような表現では、メッセージに迫力がでないのです。どうして「解決していきます」「発揮していきます」と言えないのでしょうか。解決に自信がないからか、見通しがたたないからこのような常套句を使うのに違いありません。血の通わないような言葉を使うから支持率が下がるのです。

大臣だけでなく、広く一般にも「思います」の常套句は蔓延しています。例えば結婚披露宴の席です。司会者がしばしば次のように言います。
・「ただ今から〜君と〜さんのご結婚披露宴を開催させていただきたいと思います」
・「ご媒酌人である〜様からお祝いのお言葉を頂戴いたしたいと思います」

「思います」によって、謙遜や慎む深さが感じる、という人もいるでしょうが、新郎新婦の門出を祝う集いですから、きびきびした表現のほうが門出の喜びが伝わるのです。司会者が、ご本人や参列者に謙遜さを表す必要は全くないのです。

「思う」を使った英語表記はどうなるかを考えてみましょう。「嬉しく思う」を英語で表記すると「I think I am so pleased」というへんてこりんな文章となります。嬉しいのか、嬉しくないのかがわかりません。「大統領を辞めたいと思います」は、「I think I want to leave the presidency」となります。ですがこのような発表では、本当に辞める決心をしたかが伝わらないのでNGです。そもそもこのような英語表記はあり得ません。

いろいろなプレゼンや発表の機会があります。そのときも「思います」を使ってはいけません。論文発表などは特にそうです。「思います」は禁句なのです。調査や研究内容を聴衆に伝えるのですから、自信を持って堂々と、まずは冒頭の出だし、「つかみ」によって聴衆の目を惹き付け、こちらの側に聴衆を引きづり込むのです。「このような結論になりました。今後さらに研究を続けてまいります」としめくくるのです。

近藤康太郎が著書「三行で撃つ」の中で【常套句やオノマトペをつかわずに、たとえば、「美しい」という言葉を使わずに美しさを表現できるようになったとき、私たちははじめて、自分の頭で世界を見られるようになるのだ】と書いています。読者の皆さんも「そう思いませんか。」

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