Last Updated on 2025年3月2日 by 成田滋
このところ英語由来のカタカナ用語がテレビなどで頻繁に使われています。それを使うアナウンサーやコメンテーターは果たして分かっていてしゃべっているのかな、、と心配になります。わたしも英語で苦労し、たまに英文での論文を書いた一端の人間です。それでも分からない単語を見聞きするのです。最近のでいえば、「ファンダメンタルズ」(fundamentals) とか「アントレプレナー」(entrepreneur)という単語です。
文化庁のサイトで分かったことですが、日本で最もよく使われている英単語のランキングが発表されています。第一位は「ストレス」、第二位が「リサイクル」、第三位が「ボランティア」だそうです。世の中の景気や生活が不安なせいで、いろいろと心配なことので「ストレス」が一番となっているようです。これは納得できます。これらの単語は、すでに多くの人たちに理解はされていて、日常的に使われています。
次に「ガバナンス」(governance)です。この単語を聞いて分かる人は、よっぽど政治や経済に詳しい人です。「コーポレートガバナンス」とい’う具合に使われるようですが、私はこの単語を日本語に訳すようにといわれたら頭を抱えます。調べてみると、「組織の統治や管理、支配を意味する言葉」とか「企業が健全な経営を行うための管理体制」というのだそうです。
「コンプライアンス」(compliance)はどうでしょうか。この単語の直訳は「従うこと」です。ビジネスにおいては「法令遵守」というのだそうです。企業理念とか企業の社会的責任、さらに従業員や顧客とのかかわり方を定める「企業倫理」として使われています。この単語が「流行る」のは、おそらく企業の社会的な規範とか社内規範などが緩んで、問題ごとが公になり、それを追求されることが多くなっているからだろうと想像できます。銀行の貸金庫から行員が顧客のものを盗んでいたという事例が続きました。
最近、「オーバードーズ」(overdoses)という言葉がニュースで使われたので、家内にきくと答えられませんでした。「ドーズ」とは一回分とか一定量という意味です。私のコロナワクチンの接種回数は「7 doses」とあります。7回接種したからです。「薬の飲み過ぎ」 といえばよいのに、わざわざ「オーバードーズ」などと言うのが理解できません。最近は、「オーバーツーリズム」とかのように、範囲を超える状態を指す場合に使われます。
もう一つ、「プライマリー・バランス」(primary fiscal balance:PB)は、国の財政状況を示す言葉で、「黒字化政策」と呼ばれています。民間や家計ではこの言葉は使われません。使うとすれば、黒字化するは「to become profitable」という具合に儲けるという意味となります。国の財政と家計の懐具合は全く違った次元の話題です。国にとってPBは、なんの心配もありません。なぜなら国債という通貨の発行権を有し、経済を支えることができるからです。
その他、インボイス、アイデンティティ、アジェンダ、スローフード、グローバリゼーション、インセンティブ、マクロとミクロ経済などなど、枚挙にいとまがありません。このようなカタカナ用語が「オールドメディア」といわれる新聞やラジオ、テレビで頻繁に使われるどうなるでしょうか。若い世代の人にはある程度馴染みがあり理解出来るでしょうが、中高年層は困るのではないでしょうか。カタカナ用語の乱用は世代間コミュニケーションの障害となりはしませんか。日本語の表現を曖昧にすることによって、日本語によるコミュニケーションを阻害し、社会的な情報の共有を妨げる恐れがあるのではないでしょうか。
そこでメディア上では、次のような言葉をカタカナ用語ではなく日本語で使ってはどうかという提案です。
ファンダメンタルズ=財政基盤、アントレプレナー=起業家、インボイス=請求書、アジェンダ=協議話題、グローバリゼーション=国際化、インセンティブ=励み、オーバードーズ=大量摂取、プライマリー・バランス=黒字化、オーバーツーリズム=観光公害、デビデンス=証拠、レジュメ=要約資料、シナジー=相乗効果
このような単語を見ますと、日本語というのはとてもわかりやすいものだ、と思いませんか。