『自閉症の息子たちのためにサービスを選ぶ』 その5 V.親がより良い選択を行うために –今後の課題–

都内のお住まいのM.N.氏から寄せられた投稿の最終回です。もし、これまで掲載してきた内容についてM.N.氏と個人的に情報を共有したいかた、もう少し公の場で討議したいというご希望がおありでしたら、私、成田までお知らせ下さい。M.N.氏にその旨お伝えして協議していきます。

I.誰のためにサービスがあるのか –家族のごく普通の地域での生活のために–
II.最初に受けたサービス –米国でのサービス–
III.帰国後のサービスの現状 –米国での経験を生かして–
IV.サービスを自ら選択する時代 –親が必要とすること–
V.親がより良い選択を行うために –今後の課題–
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V.親がより良い選択を行うために –今後の課題–

障害のある人とその家族がサービスを選択するに当たって議論されるべきことは、(a) サービスの質・量の充実、(b) 効率的な情報提供、(c) 本人と家族が選択する力をつける支援の3点です。特に3点目の本人と家族が選択する力をつける支援にポイントを絞って述べることとします。

1.専門家による支援
親は初めから子どもの障害についての専門家ではないので、専門家からの子どもの障害と発達段階についての説明、子どもとの関わり方と生活スキルの教え方などの指導を必要としています。そのような指導を受けることにより、子どもとの関わり方を理解でき、子育てに自信を持てるようになります。特に早期療育における、専門家が果たす役割は大きいと考えています。このように,子どもを理解することにより、親として子どもが必要とするサービスを考え、選択できるようになります。

2.セルフヘルプグループによる支援
同じような経験を持つ親と話し合うことにより、障害のある子どもを抱える家族同士で連携が育まれ、共感が養われ、それが色々な力になります。何よりも、障害のある子どもを抱えている家族が他にいることを知り、孤独な気持ちが癒されます。将来についての見通しについても先輩の親との話しの中から持てるようになります。親が疑問に思っていること、不安に思っていることを、専門家でない第三者に話すことはとても大切です。話し合うことで、具体的な解決策や解答がでなくても、問題が整理できたり、家族としての生活の在り方についての方向性のようなものが親に見えてきたりします。このような経験が、具体的に本人と家族に必要なサービスを選択する時の助けとなります。

3.継続的な相談コーディネータによる支援
継続的に本人に関われるコーディネータ(キーパスン)を中心とした個別教育計画/個別ライフプラン/個別援助プランなどの定期的な作成と見直しができるシステムが必要です。教育計画やプランを定期的に見直すことにより、本人、家族とも将来への見通しをもちながら、問題整理・解決ができます。このような経験の積み重ねにより、家族と本人がどのようなサービスを必要としているかを自ら考え、主張し、選択できるようになると考えます。

4.おわりに
障害のある子どもとその家族が、ごく当たり前に地域の中で生活できるようにすること、これこそが、医療・教育・福祉サービスの役割だと思います。親はこの目的のために,障害のある子どもたちのサービスを選択しています。しかし,家族は最初から障害のある子どもと様々なサービスを上手く利用して生活しているわけではありません。家族は子どもと関わりのある専門家や仲間の家族などに支えられ,また子どもの障害について様々なことを学びながら、本人と家族が必要とするサービスを考え、次第にそれらを選択できるようになのです。

最後に,障害のある人とその家族が自ら選択する力をつけ、また,この選択を可能にするためには,継続的に本人とその家族に関わることのできる『サービス・相談コーディネータ』の存在が必要だと考えます。このコーディネータの役割は,医療・教育・福祉の立場の関係者が連携して,本人と家族のニーズを理解し、これらのニーズに見合うサービスの提供をコーディネートすることです。

どのような制度の中で、誰が、その役を引き受けるべきかは今後の大きな課題です。しかし、二人の自閉症障害のある息子の親としては、一日も早くこのようなシステムができることを願っております。今,発達障害のある人を取り巻くたちの連携と創意工夫が問われているのだと思います。

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