登校や下校の方法を学ぶことは、どの子どもにとっても大事なことだ。スクールバスの乗降の仕方にもさまざまなスキルが要求される。しかし、その方法を習得することが困難な生徒も多い。簡潔な指示や分かりやすい題材を用意し、課題が難しい場合はお助けヒントのプロンプトをだし、子どもが反応できたら、直後に子どもの好きな物や活動、褒め言葉をだすなどが指導の基本となる。以下に紹介する記録は、通学バスの利用の仕方である。これも応用行動分析(Applied Behavior Analysis: ABA)の技法である。
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計画承認日:1995年1月19日
生徒氏名:A. B.
年令:16才
生年月日:1978年
教師:A. S.
実施学校:Santa Clara高校
1. 標的行動についての記述:
標的となる行動とは、Aがシートベルトを開放して外す、座席から離れる、席を替わる、他の生徒を殴打する、または奇声をあげることである。
2. 介入適用の理由:
Aがバスに乗車中、一定場所でシートベルトを着用した状態は、彼女の安全の観点から必要だからである。
3. 安全な抑制が用いられること:
段階的な安全抑制を含む以下の手順が含まれる。
・前触れとしての状況:
自分の席に誰か座っている。命令的な仕方で指示される時。病気の時。
・強化子:
褒めることや注意を与えること、雑誌(Avon, ads, coupons)等、食べ物、図版カード、学校での好きな活動、たとえばパソコン、化粧や爪の手入れに熱中すること、地域への外出、家庭でテレビの時間、リュックサックのおもちゃ、お菓子の包みなどを強化子とする。
・介入指導:
Aの学校への行き帰りでのバス乗車に関する家庭・学校、通学途上における一貫した介入指導を行う。
1. 保護者は、バスの乗車前のAに対して、とるべきいつもの手順や行動について思いおこさせる。さらに保護者は、Aに対して、彼女がバスの中でふさわしい安全に必要な行動がとれれば、帰宅してからテレビを見ることができることも言葉で想起させる。
2. 保護者、学校職員、そしてバス運転士は、Aに穏やかな言葉で安全乗車が必要であることを指示し、指示や適切な結果や褒美がもらえることを気付かせる。
a. 職員は、Aにとってバスでの登校が、安全で適切に行われるための援助者であることを強調する。さらに、褒美としてはクラスの活動で特に好きなこと、朝食、絵カードなどを想起させる。
3. 運転士は、Aをバスに迎えると適切な行動をとれると褒美が与えられることや、自分がAの援助者であることを彼女に思い起こさせる。このような声かけをすることは、教育委員会が定めている。
4. 適切なおもちゃや書籍は、彼女の背負い袋に入れておく。
5. Aには、バスの後方に自分の席を割り当てられて、監督を受ける。
6. もし、Aが座席の留め金を外したり座席を変わろうとしたら、運転士は言葉でAに注意する。例えば、普通の語調で、「自分の席に座って、座席のベルトを締めなさい」などといった具合である。
7. 「いつ/そのとき」という関係や状況を明確に指示する。例えば、「シートベルトをして座っていたらラジオが聞けるよ」といった声かけである。
8. もし行動が安定しそれが持続した場合、彼女に対してバスのステッカーが貰えることを思い出させる。
9. もしふさわしい行動が継続、ないし持続しない場合、「〜しなさい。そうでなければ、あなたのおもちゃ/本を取り上げますよ」とAに注意を促す。
10. もし、ふさわしくない行動が継続し、拡大するような場合は、Aや他の生徒に危険を及ぼすような場合は、運転士は道路の安全を見計らって車を停車させる。
a. 運転士は、Aがおもちゃや本を手放すように指示し、取り上げる。次のバス停でそれを返してもらえることも伝える。
11. もし、ふさわしくない行動が継続し、拡大するような場合は、運転士は次の段階の安全かつ適切な選択肢のために責任者と協議する。
12. ふさわしくない行動が継続する場合は、通学責任者はただちに校長と協議する。
校区が広いアメリカ。黄色いスクールバスはどの街でも走っている。どのバスも年期が入っているが極めて頑丈につくられている。民間業者によって運営されている。