IEPはどうなっているか その12 行動介入IEP その4

問題とされる生徒の行動への対処は、多くの場合、特別支援教育の基本とされる手法が使われる。応用行動分析、Applied Behavior Analysis: ABAである。生徒ができる適切な行動を増やしていくことで、相対的に不適切な行動を減らしていくという方法を採用する。生徒を取り巻く環境に解決の糸口を求めることで、行動の改善を図ろうとする視点で、生徒の行動に介入する。以下の記録は、そのことを詳しく伝えているので参考になる。

生徒氏名:A. B.
年令:16才
生年月日:1978年
教師:A.S
実施学校:Santa Clara高校

行動分析に関する評価についての要約
Aは、課題から別な課題に移る間や、自分が欲しない課題をすることを要求されたときに、欲求不満を表わす。彼女は、通常、哀れっぽく泣いたり、奇声を発することによって自分の欲求不満を表現する。時々、Aは、備品とか身の回りの物をたたき、椅子を投げるというように非常に興奮した状態になることもある。彼女はまた、たまたま彼女のそばにいる仲間への攻撃とか、課題をするように指示するスタッフへの攻撃を向ける。スタッフへの殴り、のどへの攻撃、服のひっつかみ、咬みつきなどの局面では、非常に興奮した状態になる。

先行な動作、結果、標的行動に関する詳細なsベースライン・データなどのついては、付随する評価報告に記述されている。

I. 行動の類型
A. 標的行動について
○哀訴や反抗への介入
身体的抵抗:
クラスまたは、地域社会から逃げだしたり、テーブルの下をはいまわったり、視線を合わせることを避ける行為のことである。
破壊:
身近にあるもの、テーブル、コンピュータ、いす、ロッカー、窓をたたいたりすることである。
攻撃:
クラスメイトに対して:たたいたり押したりすることである。
スタッフに対して:
叩く、押す、蹴る、のどをつかむ、あるいは咬みつくことである。

B. 選択/代替行動について
哀訴や奇声:正常な声をだす。
身体的抵抗:二つの領域から活動を選択させる。
破壊:席につけ、水を飲ませる。
攻撃:スタッフから離したり、寝かせたり水を飲ませる。

C. 目標と目的:適切な目標に関するIEPリストからの記録
職業訓練目標:絵で描かれた日課
職業訓練目標:集団活動
地域社会目標:ニーズを表現するための携帯用コミュニケーションブックの使用
社会的/情緒的目標:通常学級への出席
学習目標:与えられた課題への取組み

II. 行動介入
A. あらゆる生活環境における介入の場
□学校  □家庭  □地域社会  □仕事 □その他

B. 予防
1. 生活様式の高揚:(望ましい変化の一覧表)
・健常な仲間との統合を拡げる。
・グループ活動への参加を拡げる。
・身体運動活動への参加を拡げる。
・学校計画における絵を使った日課表による行動予測を拡げる。
・課題達成見込みについて予測を拡げる。

2.行動の代替(教示または、行動の代替についてのステップの一覧表)
哀訴:正常な声を出すよう指示したり、意図的に行動を無視していることをAに気付かせる。
奇声:Aに緊張をほぐす姿勢である“タートルポジション(床にうつ向け)“を教え、または別の指示を選択をさせたり、褒美をとりあげる。
破壊:寝かせて“タートルポジションをとりなさい“と指示する。
攻撃:寝かせて、危害を加えるような行動を抑えるために“タートルポジションをとりなさい“と指示する。

3.積極的処置(先行動作、結果または、教育計画における計画変更の一覧表)
・積極的強化:望ましい行動に賞を与える。
・強化:望ましい代替行動をするとき、ポジティブな強化を与える。
・他の行動についての異なる強化:望ましくない行動が起こった後は、一定時間は強化を与えない。
・自然な強化についての認識:活動または、行動についての自然に起こった結果である強化子を使用する。つまり調理活動をしたあとは、食べ物を食べることを褒美とする。
・漸次接近行動:標的行動に徐々に近ずくような行動については、僅かでも見られる積極的な変化を強化する。

4. 変容の設定(誘因、環境、活動、カリキュラム、教育方略、予測等についての 修正の一覧表)
・Aは、教師の近くで作業をするようにする。
・個別の日常スケジュール、計画の変更などは早めに知らせ、Aが適切な選択ができるように配慮する。
・Aに対して、日常の課題が作られそれが説明される。
・ルールや課題を説明する。
・自分が好きでないこと指示されたとき、課題を終えたときに与えられる褒美に随伴して、別の行動が与えられる。
・不適切な行動は無視され、適切な行動や活動には強化が与えられる。
・適切な行動を助長するために、まわりの仲間を強化するとともに不適切な行動を無視する。
・不適切な行動の代わり、適切な行動について指導したり別な指導を行う。
・教示の代わりや娯楽行動:正しく発声するよう指示したり、タートルポジションをとらせる。
・自分のニーズを適切に伝えれるように、機能的コミュニケーションシステムを用意する。

C. 標的行動に関する反応
最も少ない制約から最も多い制約を伴う介入の経過についての計画を列挙し、そのステップを含む。
・哀訴:正しくしゃべることや望ましくない行為に対しては、意図的に無視されることを気付かせる。
・奇声:正しくしゃべるよう、言葉で注意を促す。
・強化子を徐々に減らすようにする。
・適切な行動について彼女に気付かせる。すなわち、「Aさん、わかりますね。これが欲しければ普通のいいかたで言ってね。」とか、「こっちを向いて。両手を出さなくても誰もそれをとったりしませんよ。」などによって、褒美が減るのではないかという恐れを抱かせないように配慮する。
・日課や自分のすべきことに気付かせるようにする。
・褒美が得られることに気付かせる。この場合は、日課を描いたカードで選択させたりする。
・褒美があったり、なかったりする活動を選択させる。この場合も、活動を描いたカードを選択させる。
破壊:
・「タートル・ポジション」をとることをAに口頭で告げ、もし、彼女がその指示に従わないならば次のステップを考える。
・彼女が、いすに腰かける準備ができているかどうか彼女に尋ねる。もし、Yesならば、次のステップを考え、もし、Noならば床に1分間腰をおろし、それからもう一度尋ねる。
・椅子に1〜3分座らせ、それができたら即時に水を与え、1分後に好きな雑誌を与える。
・散歩をさせる。
・活動に復帰させる。
・攻撃:
・「タートル・ポジション」をとるようにAに口頭で告げ、もし、その指示に従わないならば次のステップを考える。
・床に横になることを命じ、平静にさせる。(1分間)
・彼女がいすに腰かける準備ができているかどうかを尋ねる。もしYesならば、次のステップを考える。もしNoならば、1分間、床に腰をおろし、その後もう一度尋ねる。
・椅子に1ー3分座らせ、それができたら即時に水を与え、1分後に雑誌を与える。
・散歩をさせる。
・活動に復帰させる。

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