1908年に二人のアメリカ人心理学者、ヤーキーズ(Robert Yerkes)とドッドソン(John Dodson)が学習課題の困難さと動機づけレベルに関する「ヤーキーズ・ドッドソンの法則」を提唱し注目されます。
ヤーキーズは霊長類 (primates) の行動研究に従事し、人の知能、学習、知覚など幅広い分野の研究を行なって比較心理学の基礎を築いたことです。例えば学習の成果は、生理学的、精神的な覚醒レベルといういわば集中力がある地点に達するまで高まるという仮説です。覚醒が高くなりすぎると成果は下降するのです。この現象は釣り鐘状のような形となります。最適な覚醒レベルは、課題の難易度や与えられる作業の段階によって変化します。また、困難で知的な作業を要求される課題では低い覚醒レベルとなり、単純な習慣的な作業では高いレベルの覚醒が要求されると結論づけます。緊張と集中力と成果の関係が、「ヤーキーズ・ドッドソンの法則」ということになります。
その他、「陸軍アルファ/ベータ(Army Alpha/Beta)」の名で知られる新兵向けの集団式知能検査を開発し実施したことです。兵士の能力に問題があるという指摘からでした。南ヨーロッパからの移民の新兵は北ヨーロッパからの新兵にくらべて知的な能力が低い、といったことも主張します。さらに1910年代になると優生学(Eugenics)を信奉するようになり人類学者などからの批判に晒されていきます。外国人恐怖症(xenophobia)や移民排斥主義(anti-immigrant sentiment)にも共鳴し物議をかもします。
ヤーキーズが我が国でも知られるようになったのは、アトランタにあるエイモリー大学(Emory University)にあるヤーキーズ霊長類研究所(Yerkes National Primate Research Center)での研究でしょう。現在も約3,400頭の霊長類を飼育しながらDNA、健康や疾病などの研究をしています。