心理学のややこしさ その十二 百科全書とフランス革命前夜

西周の経歴を調べていくうちに「百科全書」の歴史や内容を知りたくなりました。「百科全書」は西周がオランダ留学中に大きな影響を受けた学術研究書です。この百科は「フランス啓蒙思想の記念碑的な作品」といわれています。1751年から1772年まで20年以上かけて完成した世界で最初の百科事典といえそうです。

1 700年代といえば、ヴォルテール(Francois Voltaire) が「哲学書簡」を、モンテスキュー(Charles de Montesquieu)が「法の精神」を、ルソー(Jean-Jacques Rousseau)が「社会契約論」を発表するなど啓蒙思想の最も華やいだ時期だったといわれます。百科事典はこうした思想家の支持をえて作られます。

当時のフランスの世情ですが、対外戦争の出費と宮廷の浪費などによる財政赤字によって増税が科され、穀物の価格上昇が起こり、失業者が増大します。各地で農民一揆も起こります。アメリカの独立宣言が1776年7月に発せられます。1789年7月14日に、旧体制(アンシャン・レジーム: Ancien regime)支配の象徴とされた「バスティーユ牢獄」 (Bastille) が襲撃されフランス革命が勃発します。

「百科全書」の編集は大変な作業だったことが伺われます。内容が盗用であり絶対主義的権威の否定や人間精神の解放を基本にしているとしてイエズス会から弾圧を受けます。執筆過程では、パリ大学神学部の三名の学者から校閲を受けるという条件がついたり、さらに国王顧問会議は全書の全面発禁を命じたりします。しかし、啓蒙思想が広まるにつれ旧体制の弱体化や教会権力の後退などにより、発刊が認められていきます。