2013年5月29日に、「AD/HDは作られた病であることを「AD/HDの父」が死ぬ前に認める」という記事が転載された。以下にある。
http://gigazine.net/news/20130529-adhd-is-made-by-industry/
記事の主たる論点や主張は以下のようなことである。
1. 「実際に精神障害の症状を示す子どもは存在するものの、過剰な診断と製薬会社の影響とによって注意欠陥多動障害(Attention Deficit/Hyperactive Disorder: AD/HD患者の数が急増している。」
2. 「”AD/HDの父”であるDr. Leon Eisenberg(レオン・アイゼンバーグ)の作り出したAD/HDは過剰な診断と相まって薬の売上を増加させた。」
3.「AD/HD患者の数が急増しているのは、AD/HDは過小評価されているいるとして、小児科医、小児精神科医、保護者、教師たちに思い込ませた製薬会社の力と、それまでは正常と考えられていた多くの子どもがAD/HDと診断されたことによるものだ。」
4. 「医者や教育者、心理学者の果たすべき役割は、子どもたちを薬漬けにすることではなく製薬市場から自由にすることである。」
筆者はこうした指摘を確認するために、2009年9月23日付けのNew York Times紙に掲載された「自閉症研究の先駆者、Dr. Leon Eisenberg死去、享年87歳」の追悼記事などを読んでみた。それらによると、確かにDr. Eisenberg氏は、「アメリカでは、製薬会社と医者との良好な関係によって子どもたちが流行のようにAD/HDと診断され、薬物治療を受けている」ことに警告している。
http://www.nytimes.com/2009/09/24/health/research/24eisenberg.html?_r=0
Dr. Eisenberg氏はさらに「AD/HDの診断は40年以上前には、あまり取り上げられなかったが、現在は子どもの8%がAD/HDと診断されている。それにより、中枢神経刺激薬の処方が極端に上昇した。」とも振り返っている。
中枢神経刺激薬であるメチルフェニデート(Methylphenidate)を含むストラテラ(Strattera)やコンサータ(Concerta)がAD/HDと診断される小児期の子ども対して幅広く処方されている。リタリン(Ritalin)も国内外で広く使われている。一般に、AD/HDの子どもに鎮静効果があり、衝動的行動や行動化の傾向を軽減するといわれる。それにより学校生活に集中できるようになるという。AD/HDの大人の多くは、メチルフェニデートによって仕事に集中することができるともいわれる。
Dr. Eisenbergは40年以上もの間、精神病理学の研究や教育、そして自閉症や社会医学の分野で活躍し、思春期の精神医学研究に対するいろいろな賞も受賞している。既に紹介した診断の手引きであるDSMやICD-10の作成にも関わってきた。こうした手引きで示された診断基準によって中枢神経刺激薬の開発が促進されたともいえる。Dr. Eisenberg自身も、自分の研究が思いもよらない方向に行ってしまうことを予見できなかったと振り返っている。そのことが彼の”AD/HD is a fictious disease.”「AD/HDとは虚構の病である」という述懐に伺える。