アメリカではすでに9つの州では、公立大学の入試において人種を考慮することを禁止しています。カリフォルニア州、ミシガン州、ワシントン州などでは、高等教育における積極的差別是正措置が廃止されたため、これらの州の主要公立大学ではマイノリティの入学者が激減しました。他にも人種を考慮することを禁止する州はあります。 アリゾナ州、フロリダ州、ジョージア州、ネブラスカ州、ニューハンプシャー州、オクラホマ州です。2020年、カリフォルニア州の有権者は、積極的差別是正措置の復活を求める投票法案をあっさり否決しました。
今回の最高裁の決定は、高等教育だけでなく、全米最初で最古の公立学校であるマサチューセッツ州のボストン・ラテン高校(Boston Latin School)、ヴァジニア州のトーマス・ジェファーソン高校(Thomas Jefferson High School)、ニューヨーク州のブロンクス科学高校(Bronx High School of Science)などの初等・中等教育選抜校にも波紋を広げ、全米に波紋を広げることになりそうです。
最終的には、National Football League(NFL)のすべてのコーチ採用決定においてマイノリティ志願者を考慮することを義務づけるルーニー・ルール(Rooney Rule)から、雇用や昇進の決定、学校や職場におけるDEI(Diversity, Equity & Inclusion)プログラムなど、国の経済、教育、社会生活のあらゆる側面に影響が及ぶことが予想されます。ハーヴァード大学のランダル・ケネディ(Randal Kennedy)教授は、「私たちは今後30年間、この問題について戦い続けることになるだろう」と語ります。
カリフォルニア大学のカラベル氏は、すでに雇用に関する訴訟が係争中であり、「この判決の論理からすれば、裁判所が定義する人種差別は雇用においても禁止されることになると思います」と指摘しています。ハーヴァード大学の共同弁護人であるビル・リー(Bill Lee)は、昨年秋にニュース社NPRのインタビューで、「この判決は、国全体、教育機関、業界全体にパンドラの箱(Pandora’s box)を開けることになるでしょう」と語っています。