外国人にも容赦なくツッコミを求める関西人がいます。外国人でもボケとツッコミはわかってくれると思うからでしょう。その通りです。彼らは笑いのなにかはわかっています。関西の場合はボケとツッコミが笑いの技能とか技芸といえそうです。『関西人は面白い』というステレオタイプがあるのは、一つはテレビで芸能人が関西弁で話していることの影響もあります。【関西弁が強いのではなく、生活ことばが強い、標準化されない生活ことばで笑いを産むのが関西漫才だ】という人もいます。頷ける言葉です。
日本の漫談家(One-man talker) には、女性客に対して「綺麗ですね」と褒めちぎった後、「私は女性を見る目が無いのです」、「昭和枯れすすきの皆さん」といって笑いを誘う定番があります。老化現象、高齢化社会、物忘れ、夫婦の確執、アルツハイマー、痴呆症、カツラ等を引き合いにしたフレーズは結構笑いを誘うことが多いようです。当然、中高年以降の聴衆者を前にしての笑いの場です。中高年に対するネタとして「冷え切った夫婦関係」「容貌の衰え」「病気や死」こうした話題で聴衆を笑わせ、終わりに「一言多かった事を心からお詫び申し上げます」といって場を和らげるのです。
「日本では、ボケとツッコミに代表されるように、会話のやりとりの中から生まれる笑いが主流ですが、欧米ではストーリーを語るような笑いのパタンが多いです。一言で欧米と言っても、アメリカとヨーロッパでもまた違っていて、ヨーロッパはアイロニー(皮肉)の要素が大きいといわれます。話題はほとんどの場合、特定のターゲット層に向けて発せられるもので、 発信する人と受け取る人の間に何らかの共通する文化が想定されているのが普通です。さきほどの漫談の話題は、中高年の人であればすぐ笑えるものばかりです。若年層にはまだピンとこないはずです。年代層によって文化が違うからでしょう。
関西のある夫婦の漫才から思うのですが、ボケは一人で突っ走るような雰囲気です。そこでツッコミは相手の話を受け入れて「おかしいと思ったところを視聴者の声としてツッコむ」のです。いかに話し相手を主役として立て、ツッコミに徹するかというのが可笑味を醸す大事な点といえそうです。