「幸せとはなにか」を考える その4 国民総幸福量

1972年頃の話である。ヒマラヤ近くにあるブータン王国(Buhtan)の国王ジグミ・シンゲ・ワンチュク(Jigme Singye Wangchuck)が国民総幸福量(Gross National Happiness, GNH)という考え方を提唱して話題となった。どうしてかというと、これまでのような経済的な指標を用いた国の発展の度合いや国民の生活を、全く別の方向から比較・評価する指標を提案したからである。これは思いも寄らないような見方であった。

「国民全体の幸福度」は、なぜ注目されたか。国の社会全体の経済的生産及び物質主義的な側面での「豊かさ」を数値化したのが、これまでの豊かさの基準であった。国民総生産(Gross National Product, GNP) や国内総生産 (Gross Domestic Product, GDP) は「金額」として計算されてきた。

国民総幸福量という概念は、きわめて数値化しにくい指標である。しかし、それを提唱した人々の英知に感じ入るものがある。なぜならこれまで比較対象するために用いてきた物差しを全く別な目盛りのついた物差しを使ったからだ。

国民総幸福量では、繁栄と幸福が強調されている。だが幸福の方がより大切だとされて宣言している。人間社会の発展とは、物質的な発展と精神的な発展が共存することだという。

だが、この「幸福」とか「幸せ」ということはまだ不確かさに満ちている。それは、個人のものか、共通な資産なのかがはっきりしないからだ。

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