心に残る名曲 その二百七 日本の名曲 中田喜直 「雪の降る街を」

現在の東京都渋谷区は、かつて東京府豊多摩郡と呼ばれていました。中田喜直はそこの出身です。父は「早春賦」で知られる作曲家の中田章。喜直は三男でした。やがて「ちいさい秋みつけた」や「めだかの学校」、「夏の思い出」などを作曲し、今日も小中学校の音楽の時間で歌い継がれています。数々の童謡、楽曲を作曲した日本における20世紀を代表する作曲家の一人といえましょう。

まず、「夏の思い出」のことです。作詞は江間章子で、彼女は幼少の頃、岩手山の近くの八幡平市に住んでいたようです。そこは水芭蕉の咲く地域でした。昭和19年頃、たまたま尾瀬を訪れて一面に咲き乱れる水芭蕉を見ます。昭和22年にNHKから依頼されとき、思い浮かんだのが尾瀬の情景で、その印象を綴ったのが「夏の思い出」といわれます。NHKのラジオ番組「ラジオ歌謡」で全国に行き渡り、おかげで尾瀬は有名になったというエピソードもあります。

次ぎに「雪の降る街を」のことです。1952年に発表され大ヒットします。この曲を作詞したのは後に劇作家として活躍する内村直也です。「雪の降る街を」はNHKの「みんなのうた」の1回目に登場し、歌は立川澄人が歌います。高英男の歌唱によりレコードも制作されるとさらに人気が高まります。高英男の甘く高雅な歌い方は聞く者をしびれさせていきます。後に中田は女声合唱、混声合唱に編曲していきます。

歌の出だしは、 「雪の降る街を想い出だけが通りすぎてゆく」、「雪の降る街を足音だけが追いかけてゆく」、「雪の降る街を息吹とともにこみあげてくる」
そして、「温かき幸せのほほえみ」、「緑なす春の日のそよ風」、「新しき光降る鐘の音」と締めくくるのです。雪の暖かさが伝わるような歌詞と旋律です。

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