ウィスコンシンで会った人々 その104 泥棒噺 「鈴ヶ森」

新米泥棒を親分が実地教育するという噺である。ドジで間抜けな新米。泥棒といってもねずみ小僧次郎吉や稲葉小僧、石川五右衛門といった暴利を貪る商人や威張っている侍を狙った「義賊」ではなく、新人泥棒の噺である。舞台は大森海岸沿。東海道は鈴ヶ森である。

親分 「出掛けるから、にぎりめしの風呂敷を担げ。お前が食べるんじゃ無いぞ。舅に食べさせるんだ」
新米泥棒 「舅って連れ合いの親ですよね」
親分 「何にも分からないのだな」
親分 「舅とはウルサいだろ。だから犬のことだ!」
新米泥棒 「では猫は小舅ですか」

親分 「ドスを差して行けよ!」
新米泥棒 「何でドスと言うのですか」
親分 「うるさいな。ドッと刺して、スッて抜くからだ」

親分 「表へ出ろ。戸締まりはしてきたか。世の中物騒だからな」、新米泥棒 「大丈夫です。物騒なのが二人出てきましたから」
新米泥棒 「暗いですね」
親分 「俺たちは暗いから仕事になるんだ」
新米泥棒  「恐いから、もっと明るい吉原に行きましょうよ」
親分 「歩くと、もっと暗いとこに行くぞ。鈴ヶ森で追い剥ぎだ」新米泥棒 「鈴ヶ森はよしましょう。しょっ引かれて首を刎ねられそう」

鈴ヶ森にやってくると、親分は旅人にどのような口上をいって金をせびるかを新米泥棒に教える。二人は口上の練習を始める。

親分 「おーい、旅人、おらぁ〜頭の縄張りだ」
親分 「知って通れば命は無い、知らずに通れば命は助けてやる!」
親分 「その代わり身包み脱いで置いて行け!」
親分 「イヤとぬかせば二尺八寸段平物をてめえの腹にお見舞え申す」

口上を新米泥棒が言うと親分が後ろに回って仕事をすることを確認する。

新米泥棒 「親分、その口上はアッシが言うんですか。それは無理です。紙に書いて下さい」
親分 「暗闇で書けるか」
新米泥棒 「アッシも読めませんから、相手に見せて読んでもらいまひょう」

真っ暗な中、鈴ヶ森に着く。新米泥棒がモタモタしている内にカモがやって来た。親分に押されて飛び出して、旅人を呼び止めた。だが新米の口上はさんざんで旅人に馬鹿にされる始末。

旅人 「二尺七寸段平物と言ったが、それを言うのだったら二尺八寸段平物と言え。一寸足りないぞ」
新米泥棒 「一寸先は闇でござんす、」

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