アジアの小国の旅 その六十六 レバノン

地中海(Mediterranean Sea)の東岸に位置する現在のレバノン(Lebanese Republic)は、古代はフェニキア人(Phoenician)の定住地でありました。フェニキア人とは、東地中海岸で紀元前13世紀ごろから海上貿易に活躍したセム語族(Semites)の人々です。セム語族の起源は、旧約聖書創世記(Genesis)5章の大洪水と箱舟(Noah’s Ark)に登場するノア(Noah)の3人の息子の1人であるシェム(Shem)から由来するといわれます。

レバノンの歴史ですが、古代はフェニキア人が住んでいたティロ(Tyre)、シドン(Sidon)、バイブロス(Byblos)という港街が紀元前3世紀頃に栄え文化や貿易の中心となっていました。フェニキア人は、レバノンから地中海を渡り、現チュニジア(Tunisia)のカルタゴ(Carthage)、バルセロナ(Barcelona)、リスボン(Lisbon)、マルセイユ(Marseille)など各地に植民地を形成した民族です。

1920年代になるとフランスが進出しキリスト教を持ち込み、その後押しでレバノン王国をつくります。1926年にレバノン共和国として成立し、1943年に独立を遂げます。レバノンは宗教や民族の多様性で隆盛していくのですが、内政や外交、経済では大きな問題を抱えていきます。特にイスラエル(Israel)やアラブ(Arab)諸国との関係、そして国内に住む多数のパレスチナ(Palestinian)難民です。

国内では、多数の政党間の微妙なバランスは、パレスチナ問題や宗教的な対立で次第に崩れていきます。それが顕在化したのが1975年に起こった内戦です。政治組織は分解していきます。1990年に内戦が終結すると、レバノンは社会的、経済的にも安定していきます。にもかかわらず他国による干渉や介入、政党間の抗争が今も続いています。