ヨーロッパの小国の旅 その二十五 フィンランド その1 スオミ

一挙にバルカン半島を離れ、バルチック海を渡りましょう。私にとってのフィンランド(Finland)とは、1952年のヘルシンキオリンピック(Helsinki Olympic)の想い出です。戦後日本が最初に参加した夏季オリンピックです。この大会で石井庄八がレスリングフリースタイルで優勝したことが報じられます。新聞やラジオで大きく報じられ、敗戦に打ちひしがれた国民に希望を与えるような快挙でした。さらにチェコスロヴァキア(Czechoslovakia)のエミール・ザトペック(Emil Zatopek)が、長距離種目の5,000メートル、10,000メートル、マラソンで金メダルを獲得する大会です。

フィンランドに関する2つ目の思い出です。1977年に国際ロータリー財団から奨学金を頂き、アメリカ南部ジョージア州(Georgia)の小さな大学に海外からの奨学生50名ほどが集まったときです。フィンランドからきた金髪の女性がいました。親睦パーティのとき彼女に「シベリウス(Jean Sibelius)のフィンランディア(Finlandia)が大好きだ」というと涙をながさんばかり喜んでいました。思いがけない会話だったからでしょう。この曲は交響詩と呼ばれ、交響組曲レンミンカイネン組曲(Renmin Kainen Suite)などとともにシベリウスの代表作といわれます。

フィンランドに関する3つ目の思い出です。1985年7月に国際精神遅滞学会(International Association on Mental Retardation)がヘルシンキでありました。そのとき論文を投稿し発表する機会に恵まれました。幸い二番目の娘もヘルシンキにやってきました。このときついでにフェリーでエストニア(Estonia)のタリン(Tallinn)へ渡りました。

フィンランドは、「フィン人の国」という意味で、フィンランドの人々は自分たちをスオミ(Suomi)と呼んでいます。国土の約70%が森林、約10%が湖沼や河川に覆われているので「森と湖の国」が代名詞となっています。北極圏内にある国土の4分の1はラップランド(Lappland)と呼ばれ、約6,000人の先住民族のサーメ(Sami)がトナカイの放牧などで暮らしています。神話や伝説が沢山あるところといわれます。神秘的なオーロラを見ようと観光客で賑わうそうです。

ヨーロッパの地図をみると、フィンランドはスカンジナビア(Scandinavia)半島の北東部に位置し、通常は北欧と呼ばれています。北側はノルウェー、西側はスウェーデンと国境を接しています。西はボスニア湾(Gulf of Bosnia)、南西はバルト海(Baltic Sea)、南はフィンランド湾(Gulf of Finland)に面しています。スカンジナビアは別名ノルディック(Nordic)とも呼ばれます。スカンジナビア諸国というときはデンマーク(Denmark)も含まれます。

フィンランドはもはやヨーロッパの小国ではありません。1980年代以降、農林水産業の経済から、携帯電話の生産量が世界1位になるなどハイテク産業を基幹とする工業先進国へと大きな変化を遂げたのがフィンランドです。その代表といえば、ノキア(NOKIA)やOSのリナックス(Linux)でしょうか。