Big History その2 これまでの歴史の認識の方法

このところオーストラリアだけでなくアメリカでもビッグ・ヒストリ(Big History)が注目されている。ビル・ゲイツ(Bill Gates)が高校生用の学習プロジェクトを後押しし、広くインターネット上で歴史を学ぶ機会を提供している。それはそれでよいのだが、、、https://www.bighistoryproject.com/home
TED(Technology Entertainment Design)という様々な分野の人物が講演するサイトでも取り上げられていっそう世間の耳目を集めている。こちらは分かりやすい。
http://www.ted.com/talks/david_christian_big_history?language=ja

Big Historyとはなにか、であるが定義は筆者の能力を越える。だがどうも従来の歴史の考え方やアプローチとは違った角度からとらえる必要がありそうである。Big Historyでは、ビッグバン以来、今日に至る長いスパンの人類の歴史を研究する分野である。科学から人類に至る多くの学際分野を総合し、人類の存在を究明する学問といわれる。宇宙、地球、生命、そして人間を原因と結果に焦点をあてて経験的な証拠に基づいて究明するのである。

Big Historyは高校で教えられ始めている。それも主としてインターネットのWeb上で双方的に学習できる分野となっている。Big Historyを提唱したのは、オーストラリアのマクワリ大学(Macquarie University) のデビッド・クリスチャン教授(David Christian)である。彼が提唱するのは、様々な分野の学者がこれまでにない共同作業によって歴史を作り上げるというものだ。

従来の歴史の手法は、農業や文明の発祥に遡る。記録に残されたものを調べ上げる。そこから共通するテーマやパタンを取り出そうとして人類の歴史は解明される。そこにはかつての王国とか文明が登場する。他方、Big Historyは様々な時間軸を駆使してビッグバン(Big Bang)から現在に至る歴史を解明しようとする。ビッグバンとは、「宇宙には始まりがあって、爆発のように膨張して現在のようになった」とする仮説である。Big Historyの研究手法を理解するには、これまでの歴史の見方を変える必要がありそうだ。

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Big History その1 王仁博士と歴史

筆者は、「歴史研究では、対象とすることは反復が不可能である」という前提に興味を抱いている。反復可能な一般的法則を追求する自然科学とは対極をなしている。しかし、新しい研究では歴史はより複雑で宇宙や生命にいたるものであることが提唱されている。これではなおさら歴史とは、を考えなければならなくなる。

1962年にエドワード・カー(Edward H. Carr)が書いた「歴史とは何か(What is History?)」が注目された。歴史の記述の中には著者による歴史観や経験にもとづいた「主観性」が入り込んでおり、むしろ時代背景などを理解することの重要性を指摘している。また、歴史小説家の陳舜臣は、「歴史は勝者によって書かれることが多く、勝者に有利な記述が行われる傾向にある。敗者の歴史記述や秘匿された文書の方が比較的信頼に足る」と言及している。なかなか興味深い指摘である。

最近、韓国は大邱市から友人が八王子にやってきた。彼は長年大邱教育大学校で歴史を研究して定年退職された。埼玉県日高市にある高麗神社や聖天院などにお連れした。聖天院は高句麗から渡来した高麗王若光の菩提寺である。在日韓民族無縁仏の慰霊塔がある。慰霊塔が建つ広場の周囲には、広開土王、太宗武烈王、王仁博士、申師任堂などの石像が配してある。いずれも韓国人の自尊心を高揚した偉人たちである。

それについてだが、ソウル市内にパゴダ公園を思い起こす。3.1.独立運動の発祥地である。そこに八角亭が建っている。聖天院の慰霊塔のそばには、韓国の建材を使用し同胞によって施工された八角亭が建てられている。友人は、日本の、それも埼玉の田舎にこのような建造物と施設があることにたいそう驚くとともに、日本人の懐の深さを感じると述懐していた。

韓民族無縁仏の慰霊塔の側には王仁博士の石像がたっている。百済から日本に渡来し、千字文と論語を伝えたとされるのが王仁である。王仁の姓である「王」は、姓からみて高句麗に滅ぼされた楽浪郡の漢人の王氏系の学者ではないか、韓国では民族史観によって「王仁は日本に進んだ文化を伝えた」といわれていると友人が説明してくれた。漢字と論語を伝えた王仁のことは、もっとわが国で知られてもよいのではないか。

この友人はアメリカ史を研究する歴史学者である。高麗神社や聖天院を案内しているときに、「Big History」–巨大歴史という概念を語ってくれた。そのことを紹介するのがこれからのブログである。
IMG_0417 聖天院
IMG_0413  高麗神社