二文字熟語と取り組む その43 「糊口」

images bc62d25b Einreise italienischer Saisonarbeiter, Brig 1956#Italian seasonal workers when entering into Switzerland, 1956日常あまり見かけない難語を取り上げています。取り上げる順序は全くランダム。時代小説を読みながら見慣れない語を拾い上げては字典で調べています。時代物の熟語は通常使うことが少ないので、使ってみたくなります。

「糊」は、米や穀物がほとんど入っていないような薄いお粥のこと。澱粉糊などの洗濯糊、防染糊、接着剤などにも使われます。「糊」にはうわべをなすという意味もあります。その場を何とか取り繕うことが「糊塗」です。
「今日まで巧みに世間の耳目を糊塗して居た」

「糊口」は「餬口」ともいいます。口を糊する、粥をすする意があります。くちすぎ、生計(たっき)をたてることです。慣用句として「糊口を凌ぐ」、「糊口の道が絶たれる」といった表現です。身過ぎ世過ぎする、露命をつなぐ、細々と暮らすという按配です。

現代の格差社会において「糊口を凌ぐ」生活をする人々が大勢います。「働けど働けど我が暮らし楽にならざり、じっと手を見る」ワーキングプアのことです。年寄りも若者も将来の不安を抱えています。保育士で結婚しても子供をつくれない人もいます。最近は貧困から生まれた「介護殺人」という事件も報告されています。低所得者への所得分配の不平等が起きている恐ろしい時代です。

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二文字熟語と取り組む その42 「剣呑」

o0450031420160322at26_p 600x398-2015032100137 a241d07c時々、辞書を見るまでは熟語の成り立ちはわからないことに気がつきます。「剣呑」という語もそうです。もともともは「剣難」だと広辞苑にあります。「剣難」がなまって「剣呑」になったというのですからわからないものです。「剣呑」とは当て字なんだそうです。佐伯泰英の時代小説にこの語がしばしば登場します。

「剣呑」は、あやういこと、あやぶむこととあります。刀などで殺されたり、傷つけられたりする災難のこと。語の使い方はいろいろあるようです。次のような例文があります。「化けの皮があらはれんと、しきりに剣呑に思う」。自分の過去がばれないかびくびくし、不安に苛まれるという意味です。

漱石の「道草」にも「兄貴だって金は欲しいだろうが、そんな剣呑な思いまでして借りる必要もあるまいからね」という文章がでてきます。「道草」は漱石の自伝的色彩の濃い作品といわれます。「道草」の主人公、健三という男がどうも漱石らしいのです。留学から帰った健三は大学教師になり、忙しい毎日を送ります。彼の妻お住は、夫を世間渡りの下手な偏屈者とみています。健三は相当な美人好みで、何やかやと女の美醜に見識を持っていることも書かれています。

そんな折、かつて健三夫婦と縁を切ったはずの養父島田が現れ、金を無心します。さらに腹違いの姉や妻の父までが現れます。兄は人生に疲れた小官吏で、金銭等を要求するのです。健三はなんとか工面して区切りをつけますが、その苦労に慨嘆するという話です。それが、「兄貴だって金は欲しいだろうが、そんな剣呑な思いまでして、、、」という台詞です。

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二文字熟語と取り組む その41 「柿落」

toukan14 010 imagesもともと「柿」とは「こけら」といって、材木を削るときにできる細長の木屑のことです。

新築や改築工事の最後に、屋根や足組みなどの「こけら」を払い落としたところから、新築または改築された劇場で行なわれる初めての興行という意味で使われるようになりました。新築落成を祝う最初の幕開けをいいます。

「柿落」が使われるのは、人が大勢集まり興行をする完成した建物のお披露目のとき。通常の民家やマンションの新築では使われません。

「こけら」の漢字「柿」は「柿」とほとんどおなじですが、別字だとあります。「柿」の旁りは鍋蓋に巾、「柿」は旁の縦棒が一本となっています。鍋蓋ではありません。

蛇足ですが、「落柿舎」という遺跡が京都の嵯峨野にあります。元禄の俳人向井去来の住まいだったようです。「柿落」という熟語とは全く関係がありません。m(-_-)m

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二文字熟語と取り組む その40 「豪儀」

d6a8b25e images kaguya_samp豪気とか強気、壮大といった意味の同義語です。「豪儀」には次のような形(なり)があるようです。
1   威勢がよく立派なさま
2   頑固で強情なさま
3   甚だしくよいこと

威勢がよく立派なさまは、例えば巨額の寄付を指して「豪儀だな!」、頑固で強情なさまは、「豪儀な性格だ」、程度のはなはだしいさまは、「この牛肉は豪儀にうめえ!」といった按配で使われます。

「豪」「豕」と音符「高」を合わせた字で、「やまあらしー豪猪」が原義です。その他に、きらびやかという意味もあります。通常、次のような熟語に見られます。
1   すぐれて力強い、勢いが盛ん 「豪快、豪傑、豪族、豪放、豪勇」
2   能力や財力などがぬきん出た人 「文豪、剣豪、酒豪、富豪」
3   並み外れている  「豪語、豪雪、豪奢」

「儀」とは進退動作の上で手本とすべきもの、作法に従って進退すること、かたどること、ことがら、わけ、といった意味を表す漢字です。

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二文字熟語と取り組む その39 「婉然」

images IMG_3398 0女性のしとやかで美しいさま。しなやかなさま たおやかな様の熟語です。にっこりとあでやかに笑うさま。美女の微笑にいい、女性のしなやかさを表すといいます。

「婉」の訓読みですが、「うつくーしい」、「したがーう」とあります。すなわち、
1 あでやか、しなやかで美しい
2  したがう。すなお
3  おだやかで、ものやわらか。遠まわし、婉曲

婉曲とは (1) 従う、飾る、めぐる、うごかす、(2) それとなくおだやかにいう、とあります。藤堂明保氏の編集による「新漢和辞典」によりますと、”「宛」とは女子がつつましく廟中に坐している形、その姿を「婉」という”とあります。

同音語の「嫣然」は、(1)  あでやか (2)すらりとして美しいという意味です。「艶然」は美しい女性が色っぽくにっこりと笑っていることをいいます。「嫣然として一笑すれば、陽城を惑わし下蔡を迷わす」という故事もあります。なお、「陽城」とは僧侶とか座主、「下蔡」とは知事にあたる県令のことです。「嫣然」とした女性に男性はすべからく惑わされる様をいいます。

「婉辞」はものやわらかにいうことです。とにもかくにも「字訓」で女偏の漢字を調べると161字もあります。はやり「女」は漢字の中で人気を独り占めしています。色々と話題に富むからでしょう。それも頷けます。

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二文字熟語と取り組む その38 「籠絡」

img_0 77cbed23 mig他人をうまく丸め込み自分の思うとおりに操ることが「籠絡」です。どうも先日の都知事の辞任という話題がいまだに尾を引くせいか、この熟語が話題になります。知事の権限を乱用して好き勝手に振る舞うことは、周りを籠絡できたからです。

「籠」とは竹でつくられた土を運ぶもっこのことです。訓読みはもちろん、カゴ、こもるという具合です。「絡」とは「ひっかけてつなぐ」という意味です。

「政を得てより士大夫、其の籠絡を受けざる無し」というフレーズがあります。周りの意見や注進に動かされず、自分の考えで政務を行う、という意味です。「士大夫」とは科挙を通った官僚とか地主のことです。

ついでに、駕籠という漢字ですが、「駕」は乗り物、他より上に出る、という意味です。「駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋を作る人」というフレーズが江戸時代に流布しました。階級や貧富にはいろいろあって、その境遇の差は甚だしいということのたとえです。

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二文字熟語と取り組む その37 「股肱」

2010102820344028f P1160733 20200000013920144736279425187_s「股」はもも、「肱」はひじ。「股肱」で手足の意です。主君の手足となって働く、最も頼りになる家来や部下とか腹心にことです。自分の手足のように信頼している忠義な家来といえば、豊臣秀吉にあっては石田三成、徳川家康においては本多正信、上杉景勝にとっては直江兼続らの重臣といったところでしょう。「股肱の臣」というフレーズがあります。
「我を以て元首の将となし、汝を以て股肱の臣たらしむ」(太平記から)

「肝」という漢字の「月」の部分は、見掛け上同じ形をしています。しかし、「肝」という漢字の「月」の部分は、本来は「肉」という字です。「肉(にく)」が偏(へん)になるときには「月」の形になり、肉月(にくづき)と呼ばれるのです。

「つきへん」を部首とする漢字は「朗」「期」「朧(おぼろ)」など月といった天文的事象や日にちなど暦に関することが多く、「にくづき」を部首とする漢字は股、肱の他に「脚」「肘」「肥」など身体部位やその状態に関係することが多いといえます。

「服」の月ですが、「字源」によればもとは舟の添え板の意味から生まれたようです。そして舟に関係する漢字をつくります。「ふなづき」の由来です。

「にくづき」は二本線がぴったり両側につく、「ふなづき」は点々を書く、「つきへん」は右側が開いている、というのが正確な書き方であるという説もあります。残念ながらワープロで使うフォントではこの違いはでてきません。常用漢字ではこのへんの違いがないのかもしれません。手書きの良さ、素晴らしさはこの微妙な表現にもあるといえましょう。

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二文字熟語と取り組む その36 「忖度」

esyaku koujien ec9e48aefbc64e5f93388bd351cc21a2-300x184広辞苑で「忖度」を調べると「他人の気持ちをおしはかること」とあります。

「忖」は心と音符の寸からなり、指をそっと置いて長さや脈をはかるように、気持ちを思いやること、慮るとあります。「寸」は手の指を四本並べ長さの一本分で「はかる」、「おもう」という意です。昔は手尺や指の幅で長さをはかりました。「心をもっておしはかる」意が「忖」ということになります。
「他人に心あり、予これを忖度す」(詩経)

「度」ですが、仏教において「渡る」と同じ意味で彼岸に渡るの意味に使われるとあります。悟りを得させる、彼岸にわたす、頭をそって仏門に入るという意味でます。僧侶となるための出家の儀式が「得度」です。他の意味として、のり、ものさし、目盛り、おきてなどがあります。そこから、法度とか制度という熟語が生まれます。、

「忄」は心が偏になるときの形。感情、意思に関する部首です。りしんべんの名称は「立心偏」に由来します。心をものさしで測るといった按配です。

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二文字熟語と取り組む その35 「杜撰」

8d8c8fae9f56658040c2a9fe29ace1fa img_1 23226「杜撰」の出典は、南宋の王楙が著した「野客叢書」。王楙は1100年代の詩人とあります。叢書とは本のシリーズのことです。そこに「杜默 為詩、多不合律」という一節があります。南宋の首都は臨安。地図をみると現在の杭州で上海の南に位置しています。日本は鎌倉時代です。

「杜」は「杜黙」という中国の詩人、「撰」は詩文を作ることを表します。杜黙の作る詩には、作詩の規則である律を外れたものが多かったことから、誤りが多い著作を意味するようになったというのです。

「杜撰」は次のような様です。
1 著作物で典拠が正確でないこと、誤りが多い著作
2 手をぬいたところが多く,いい加減であること

このように「杜撰」は、杜黙の詩は詩の形式に合わないものが多かったという故事から由来します。自分の名前が、このような熟語になろうとは本人も驚いているでしょう。

「杜撰」といえば、やっつけ、粗雑な 、行き当たりばったり、 雑ぱくなといった類似語や表現が浮かびます。 「杜撰」の「杜」は、本物でない、仮の意味という俗語であるという説もあります。

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二文字熟語と取り組む その34 「首長」

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先日、テレビのコンメンテータが「首長」という語を「くびちょう」と呼んでいたのに少々驚きました。一般には、都道府県の知事や、市町村、特別区の長を指して使われています。発音はもちろんシュチョウです。シュは「首」の音読み、チョウは「長」の音読みですから、この熟語は、他の熟語と同様に2文字とも音読みで発音されるのです。高校のときまで、二文字熟語は訓読みか音読みであると教わってきたので、私は「くびちょう」に驚いたのです。

ところが「化学」と「科学」を区別するために「化学」を「ばけガク」と呼びます。他にも「私立」と「市立」が紛らわしいので「わたくしリツ」「いちリツ」と読み分けたりします。このような変則的な読み方がされるのは、同音異義語が多いからでしょうか。

「くびちょう」に戻ります。テレビで「しゅちょう」と発音されたとき、「市長」とか「首相」と聞き違えるかもしれません。読み上げテキストの脈絡で、どちらの「首長」かは判断できますが、「くびちょう」の響きはどうも違和感があります。今、「くびちょう」を呼ぶのは定着しつつあるようで、ささやかな抵抗をしたい気分です。

お役所用語か放送用語かは定かではありませんが、市長や知事にとっては、首長は「くびちょう」では落ち着かないのではないでしょうか。「シュチョウ」と読み上げられ、もしかしたら「シュショウ」というように聞かれ、「俺は首相なのか、、」とほくそ笑むかもしれません。首相を「あべくびそう」と発音されるようになれば、官房長官が記者会見でさっそく苦言を呈するでしょう。

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